
邪恋の爪痕と片恋の彼
第8章 知らない自分
「親族の配慮で俺は葬儀にも…行けないのに……報道陣は無遠慮に野田の葬儀にカメラを向けてた――――…ニュースはそんなのばっかりで……だから、テレビを捨てたんだ……
でもさ、捨てたら…捨てたで――――野田のと繋がりが無くなったようで…感情が無くなったんだよなぁ…」
テレビを捨てた日から…
生きる気力が抜け落ちて――――…
どんどん物を捨てて行くようになった…
「――――なんか…テレビを捨てたら…もう、何も要らなくなって……
カッコいい言い方したら…“断捨離”ってやつ?しつづけちゃってた――――」
「は?――――断捨離?って、まさか…境井さんの部屋って今なにがあるんですか?」
真壁に言われて…部屋の様子を思い浮かべる。
「――――部屋には…何も無いかも…」
「は?テーブルも?ベッド…も?」
テーブルもベッドも…早い段階で捨てたから…棚もパソコンも…今はない。
