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狼からの招待状

第4章 迷路 -MIROH-

 検査室の隣の小部屋の、隅のベッドのチャンミンは、頭の包帯は取れていなかったが、落ち着いて眠っているようだった。
 顔は青ざめていたが、浮腫みはひいたらしい。 「デザートも良かったら…フライがお小遣いをくれたんです」
「そう─、じゃ、ケーキを」ようやく、ユノが笑顔になった。



 珈琲を飲みながら、ショートケーキを頬張るユノを眺めている。
ケーキの上の小粒な苺を、子供のような仕草で小さな口に入れる。
 ─レストランはだだっ広く、地下3階にある。天井の明り窓から、冬を感じさせる日差しは淡かった。
 「もう1個頼みますか」ワゴンを押し、傍らの看護士らしいグループのテーブルに、紅茶を運んできたウェイターを見ながら、訊く。
 「俺も紅茶を飲むよ…」グレがウェイターに声をかけた。「ここはロシア紅茶が美味しいです」グレの言葉に頷くユノ。
 ……「お小遣いをくれるなんて、良い兄さんだね」林檎の香りのする紅茶を啜りながら云うと、「髪もとかしてくれるんです」「え…」「僕をお人形扱い」白い椅子の上のマフラーを取り上げ、「これも高台は寒いからって、巻いてくれたんです」マフラーは乗って来た車と同じ水色だった。

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