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狼からの招待状

第4章 迷路 -MIROH-

 検査室へ真っ白な雪いろのホールを通りながら、グレが訊く。ホールの遠く奥まった小さな窓が、キラリと反射する。「チャンミンが、心配で」下を向いてぼそぼそ声のユノ。
 「転院したばかりのときは」歩調をユノに合わせて落としたグレ。「検査も出来なかった…衰弱していた」「衰弱?」「急な寒さ。移動、寝たきりで体力も無くて─検査出来るのは落ち着いたからです」「…」ユノは黙り込んだ。
 ──「言語障害なんて…歌はもう無理かな」ぼそりと、ひとりごとのように呟いた。
「チャンミンさんは引退して、婚約者のかたのご事業を手伝われる。将来を考えてここでリハビリを含めて、治療する─」「うん…だけど、チャンミンが閉じ込められたみたいな」「辺鄙な土地ですからね」
 誰もいないエレベーター・ホール。
 「チャンミンさんのご家族より、婚約者のご家族が責任を持って、こちらに転院をされた。ユノ先輩はお任せしていいんですよ」「そう…。うん─チャンミン良くなって、退院できるかな」ユノの横顔をちらっと見て、「ここは、紹介状を持って、世界中から患者がくる。専門病院で…、特権階級のための医療…快くなりますよ」

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