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狼からの招待状

第4章 迷路 -MIROH-

 唇の端をひきつらせ「はい」「チャンミンさんは以前、精神科にかかられましたね」「そうです」「その後はご病状は」「…チャンミンは僕より丈夫で…入院するのは僕のほうで…体調管理によく─病院で診てもらってて…」語尾が震え、途切れがちになった。
 「ユノさま」うつむいた小さな顔、温かく見やり…「それほどご健康に留意されてらしたなら、ご本人の問題ではないのでしょう」「失礼ですが、ご家族がどなたもお見えになりませんね、ご友人はおいでになったようですが」グレが気遣わしげに云うと、ユノの瞳が動いた。
  


 「さようでございますか」ため息まじりの侍従は、目を伏せたが、「お祖父さま、お祖母さまは」「天寿を全うされました」「ユノ先輩」脇からグレが、「チャンミンさんがソウルの病院に転院すれば、ご家族のお一人でもお付き添われますか」「…無理でしょう」云って項垂れた。
 「グレさま。転院はおそらく許可されません」


 向こうからやってきた看護師とすれ違う…白い布で覆われたカートを機械的に押し歩く、無表情な顔…、アンドロイドのようだった。
 「どうしたんです、ユノ先輩」

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