テキストサイズ

狼からの招待状

第4章 迷路 -MIROH-

 道路両側は黒い高い柵、近づくにつれ、正門は槍のような柵の並ぶ、厳めしい造りと分かった。 正門を入る。すぐ脇に男性の裸像の彫刻があった。「ここです、セント・キャルバリー・メディケア。脳神経科の専門病院です」円形の噴水台をまわり、正面玄関の車寄せに水色の車体は停まった。
 「キャルバリ…」「ゴルゴダの丘のことです。─もともと、この場所には修道院があったんです」凍る風が下から吹いて来た。世界から隔絶された孤高の地、由緒ある古めかしいホテルの雰囲気…… 
 黒いソファーの見えるガラス張りのロビーの片隅、人影がこちらに向けてお辞儀をしている。
 「ユノ先輩、入りましょう」グレが透明な重いドアを押し開けた。
 幼いエンジェルたちが噴水台のうえを飛ぶ像に、黒い鳥が1羽……



 「影?」「それが事故によるものか─或いは脳疾患の…」個室の壁の電話が軽くベルを鳴らす。
 ヨボセョ──折り目正しい受け答えを聞き流しながら、ユノはキム侍従の黒いスーツの背中を見る。
 …通話はなかなか終わらない…隣のグレは物思いの横顔…「ユノ先輩」 向きなおった白い貌。「電話はおそらく、検査のこと…」朱唇が開く。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ