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狼からの招待状

第3章 火影

 荒い鼻息を吐き、肥満体が屈んだゴリラの姿勢で突進する。裏拳が、その顔面に叩き込まれた。サーカスの熊のように、他愛なくノビて、贅肉で突き出た腹を丸出しに、倒れる中年太りの男。
 「レイ!」女性の叫びと幼児のカン高い泣き声。  
 見上げたレイ…グレの目に、柵に挟まって身動き出来ない小さな体と、その下から、ビルの壁を蜘蛛のように登ってくる人影が映る。
 軽々と、壁面の出っ張りや窓枠に手足を掛けたロッククライミングの要領で、泣き喚く幼児に近づいてゆく。
 サイレンも近づいてきた。
 幼児は頭が柵に入り込んでしまったらしい。グレが側に行くと、また泣き声を張り上げる。
 アッポ(痛たた…)と声がする。幼児に髪を引っ張られていた。
 「ミスター・フライ」幼児の頭を柵からそっとはずし、身軽に柵を越え抱き上げようとすると、下から足音がきこえてきた。警官たちだった。
 


 「ミスター・ホンギルトン。…Good job」グレに赤髪の女性が会釈しながら、警官に連れられパトカーに向かう。
 …幼児と豊胸を露にされた女、失神した肥満体を乗せた救急車のサイレンが、まだ遠く響き渡る。
 「…俺たち容疑者か?」すれ違った警官が、警帽の陰からじろりと睨む。

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