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狼からの招待状

第3章 火影

「世代交代。ですよ」「…うん…」ふと、時計が気になり、手首に目をやろうとすると、「時間が来ました、行きましょう」ユノを促し、テミンは立ち上がる。─カウンターの後ろから、笑う声と手拍子…。



 「タクシー拾いましょう、ユノ兄さん」「最終の空港バスにするよ…確実だ」ターミナルへ二人は兄弟のように、並んで歩く─。
 「入隊すらしてないけど」白い息を吐くテミン。「転役したら、独立しないと─」「独立?」頷き、「息苦しいから」「…え?」「独りで自由にやってみたいんです」
 《INCHEON》の輝く星のターミナル標識が、赤く青く二重銀河の煌めき……「バス来てますね」─蒼白いヘッド・ライトに、蒸気のように排ガスが煙る。
 「…ここでいいよ、ティム」「空港まで、送りたい…」「俺も訓練所まで送れない」若いヒステリー女の悲鳴に似たクラクションが、近くの交差点であがった。
 …「チャンミン兄さんと、いてください」テミンに見送られ、最終の空港バスに乗り込む。出発時間にまだ早い車内は、閑散としている。
 スマホでチャンミンの妹を呼び出す。コール音が、長い…(はい?)…切りかけた時、不機嫌な男の声が、耳許で、した。

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