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狼からの招待状

第1章 幻都

 「彼らは何と…?」「定時の回診だそうです」紅茶を勧め、「チョン・ユノさま。お時間はおありでしょうか」「はい─ユノで、いいです」「それでは、ユノさま」紅茶のかぐわしい香り……
 「チャンミンさんは事故に遭われ、救急車でこの病院に運ばれました」「事故は車の…」「さようでございます。運転はお嬢さまがされておりました」「ニュース…友人の話では、運転はチャンミンが」「会長のお考えで、報道はそのようになりました」口を噤んだユノの瞳が、微かに動いた。
 「僕は、エミンさんによく思われていないようです」「…動転されたのです」キム侍従をまっすぐに見、病室に視線を移すと、「暫くは、参りません」「ご連絡差し上げます」名刺にホテルの電話番号とルームナンバーを書き添え、「チャンミンを頼みます」手渡すとソファーから離れた。



 …小鳩が足元を跳ねる動きで、通る。空は低く雲が垂れ込めてきた。 (酒場に行くには、早い時間だな)短い羽根を慌ただしく動かし、小鳩が飛び上がる。─袖で引きちぎったTシャツ、汚れたジーンズ、色褪せた髪の毛、じゃらつかせたアクセサリー…赤い羽のピアス──

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