
狼からの招待状
第1章 幻都
揺らぐ湯気の先にガラスの窓─その奥に、ベッドに横たわるチャンミン……
「彼の容態は─どうなんです」「まずは安静に…とのことです」老紳士に向き直り、「ミスター・キム」「侍従と、お呼びください」「では、キム侍従─」口を開きかけると、病室のドアがノックされた。
軽くユノに頭を下げ、ドアに向かう。機敏な動きだった。
入ってきたのは、医師と2人の看護師だった。チャンミンの枕元に屈み込み、ひそひそ声の英語……やがて、3人は顔を上げ、そばに控えるキムを完全に無視して、ドアを開けようとする。
「お待ちください」英語の授業のリーダーのテープが、回っているような発音だった。
ドアの前で行く手を塞がれ、薄い金髪の医師は、キム侍従の顔を見た。キムのほうが背が高く、背筋もまっすぐ伸びている。
早口の英語のやりとりのあと、3人は病室を出て行った。ドアを閉める時、医師の目がユノに向けられた─珍獣でも眺める目つきだった。
特別室を、黄色い人種が使うのが、不服なのだろう。(ターミナルでも。…ホテルでも、こうだった)「─ご無礼致しました、お話しの途中でした」キム侍従は詫びて、傍らの低い椅子に掛ける。
「彼の容態は─どうなんです」「まずは安静に…とのことです」老紳士に向き直り、「ミスター・キム」「侍従と、お呼びください」「では、キム侍従─」口を開きかけると、病室のドアがノックされた。
軽くユノに頭を下げ、ドアに向かう。機敏な動きだった。
入ってきたのは、医師と2人の看護師だった。チャンミンの枕元に屈み込み、ひそひそ声の英語……やがて、3人は顔を上げ、そばに控えるキムを完全に無視して、ドアを開けようとする。
「お待ちください」英語の授業のリーダーのテープが、回っているような発音だった。
ドアの前で行く手を塞がれ、薄い金髪の医師は、キム侍従の顔を見た。キムのほうが背が高く、背筋もまっすぐ伸びている。
早口の英語のやりとりのあと、3人は病室を出て行った。ドアを閉める時、医師の目がユノに向けられた─珍獣でも眺める目つきだった。
特別室を、黄色い人種が使うのが、不服なのだろう。(ターミナルでも。…ホテルでも、こうだった)「─ご無礼致しました、お話しの途中でした」キム侍従は詫びて、傍らの低い椅子に掛ける。
