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狼からの招待状

第3章 火影

濃い蜂蜜いろの紅茶で満たされている。
 「僕は結構です」グレはそう云うと、「エミンさんは大学はどうされたのですか」「休学されました」「そうでしたか。─以前お伺いしたあと、相談のお電話を頂いたので、気になっていたのです」
 「さようでございましたか」ゆっくりソファーにかけた侍従は、「お嬢さまは楽しみにご準備されていたお式も、チャンミンさんとのご新婚生活も滞り…お疲れになられたようです」「ご静養にいらしたのですか」「会長もお嬢さまをご案じになり…お付き添われました」グラスをそっとテーブルに戻し、「僕もお会いする約束さえ出来ずに─同じ大学の先輩でありながら、力になれませんでした」「グレさま。お気になさらずに─お嬢さまは、お気晴らしのおつもりでございました」
 考えごとに耽っていたらしいユノが顔を上げ、「いったん、明日の夜、帰国します。また戻るまで─チャンミンをお願いします」「かしこまりました」いちど口を噤んだ侍従は、ちらりと病室に目を向けた…。
 「ユノさま。お戻りになられましたら、お話しなくてはならないことがございます」

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