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狼からの招待状

第3章 火影

「愛の旅立ち─です」「あぁ…、そりゃ良かった」紙幣とコインをありったけ、袋に入れる。
 「こんなにたくさん?」「要らないから。俺も旅立つから…」ショットグラスのトレイを運ぶジャスミンが、ユノを見た。 
 「ご帰国ですか」
 ─微かに頷くユノ。
「一度は…帰らないと」コースターのショットグラスを取り上げた。
 スマホに、レラやシウォンからのメールが毎日のように届いている。
仕事の停滞を懸念し、経営陣の一員としての責任も問う内容だった。
 濃い色合いの酒精を飲み干し、ショットグラスをおく…ブランデーらしかった。
 「閉店に、間に合いましたね」グレが、扉から姿をあらわした─ワインカラーのスカーフを外し、「ハロウィンにしては、今夜は小春日です」
 ジャスミンが、冷蔵庫からりんご酒を取り出し、グレの前に運ぶ。
 「コマォ、ジャスミン」笑顔でひとくち飲む。 「もういいよ、ジャスミン」マスターが声をかける。「トップネ サラッソ(おかげで助かった)」「チョンマネョ(どういたしまして)」外したウサギの耳を、フライが頭につけた。
 「可愛いフライうさぎ」グレの一言に皆が笑う。

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