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狼からの招待状

第3章 火影

「どうしました」おだやかに訊かれる。長い髪のあいだの顔は、マドンナの面影がある。
 「貴方の運命のカードは」テントの外…遠い声。「もう─占うまでもない」…笑い声、ハロウィンのパーティーの酒に、酔っているのだろうか?
 ─風がバサバサと女の後ろで、垂れ幕を破るような音を……カンテラの燃え尽きるようなジジジ…という音、それを掻き消す悲鳴が…冷たい夜風が吹き込み、テントのなかは暗くなる。
 (チャンミン)黒いスクリーンのような幕に、死人の顔をした若い女性が、二人映る─叫んでいるのか、枯木の空洞のかたちの黒く開いた口。
 びりびりに引き裂かれた白いドレスのまま、二人は足を縺れさせながら、走る…。
 …姉妹なのだろうか、恐怖の表情がよく似ている、二人─を、裸の男が追いかける。頭に血の染みた包帯を巻きつけ、走る。包帯はどんどんほどけ、後ろに引き摺られ、包帯の取れた頭から、白い豆腐のような脳が、地面に粥のように、こぼれ落ちる。(チャンミン)
 …やがて、息があがって倒れ込んだ女の脚につまづき、もう一人の女も、暗い地面に倒れる。(チャンミン)

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