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狼からの招待状

第3章 火影

 二人は寄り添い、ワンピースの装いの若者が、ショートヘアの若者にうっとりと頭をもたせかける。
 「お似合いのお二人…弟ども」ギターを傍らにしたフライが云うと、「兄さんのカウボーイ姿もお似合いです」ワンピースの若者が笑顔で返し、「ギターの腕はさすがですね」フライの足元の小箱を覗いたショートヘアの若者が、感心したように云った。
 「お前らの仮装には負けるよ」小箱から幾枚もの紙幣を取り出し、二人の袋に入れる。「お兄さん、…『セプテンバー』弾いて」黒髪を編みこみにした黒人女性が、グラスを手にしてリクエストした。
 乾いたギターの跳ねるリズムに、手を繋いだ二人が踊り出し、ワンピースが翻ると、口笛があちこちから飛ぶ。
 頭にウサギの耳を付けて、赤い蝶ネクタイにベスト姿のジャスミンが、シャンパンの瓶を注いで 客の間をまわると、投げキスがとんだ。



 ─カウンターのかぼちゃの蝋燭は白光ライト。何処からか、風が吹き込んで炎が揺らめくように、チカチカ瞬いた。



 けばけばしい仮面をつけた数人が、道の傍らを通って行く。路地の奥の家々の窓の灯りが、夜が更けても煌々とハロウィンの闇を照らす。

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