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狼からの招待状

第3章 火影

 ─気がつくと、教会の庭にはもう誰もいない。「話があるなら、表通りのパーラーでも入ろう」 …雲が青空を、灰に塗り替え、冷ややかな風を地上に送る…
 タクシーに手を挙げ、二人が乗り込むのを、教会の正面に置かれた、巨大なカボチャが口と二つの眼を虚ろに開け、見送った。



 「お砂糖入れると、温まるよ…」「ミルクセーキですから、このまま飲みます」照れ笑いのユノ。
 …小さな茶房の雰囲気のパーラーは、窓にコウモリや黒猫、クモの巣などのハロウィンの飾りシールが貼られてある。
 「ユノお兄さん」ブラックココアの白いカップを両手で包み、口もとに運ぶ手を止め、「…うん」テディに、笑顔を向けた。
 「チャンミンさん。ユノお兄さんの愛してるひと」「そう。いちばん─ね」セオドア…テディの柔らかそうな金髪が、輝く。
 「良くなって退院して、婚約者と式挙げて」長めのボブの髪のテディは首をかしげる。「結婚して、二人で新しい家庭作る」「あぁ…」「ユノお兄さんはそれでいいんですか」
 「チャンミンが」目を伏せ、「しあわせなら」笑顔になり、「兄だから俺は」ふと窓の外を見た…「弟の幸福、素直に喜びたい」

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