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狼からの招待状

第7章 ブルー・クリスマス

 「リサ」「はい」朗らかな口調に、顔を向けると、「宿題の、謎解きが出来たようね。チャペルに行きましょう」「チャペル?」頷くと、「気持ちを静めるのと…マダムをふたりで御詣り。お礼も、兼ねてね」「お礼?」「リサの後輩たちの実習に、ご献体いただいた」「…そうでした」再び、顔を赤らめるリサ。
 「チャペルは冷える」青いチェック柄のコートをチノ教授は、羽織る。 「マフラー、私─とってきます」本革のローファが、ロッカーに走っていった。



 薄ら青いチャペルのなか…聖壇の傍らにマリア像。幼な子を抱いている…春の初めの夕暮れを思わす彩りのステンド・グラス…
 「マダムは、ジャンに首を絞めて殺してくれと、頼んだ」「─うん」
ふたりは、いちばん前の教会席に並んで、掛けている。
 チャペルのなかは、思ったほど、冷えてはいない。床下からの微かな暖気…オンドルパンのなかに、居るようだった。
 ──ジャンは、頼まれるままマダムの首を絞めた。
 殺すには、至らなかった。
 マダムが、気分が悪いと訴えたので、ジャンは洗面器を用意した。水差しもと云われて、それも運んだ。
 

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