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狼からの招待状

第7章 ブルー・クリスマス

「未熟で…、自分に悔しいです」「頑張り屋で、勝ち気ね、リサ」「頑張り屋なんて、…空回りしてるだけです─」
 クリスマス・イブの夜のドライブインの事件。 バイカー同士の揉め事が、私刑になり、駐車場の市民も巻き込んだ乱闘になった。
 駐車場の係員やハイウェイに逃げようとしたツアーバスの運転手、イブの夜のドライブ・デートのカップルが死傷した。 当事者のバイカーたちには、重傷者だけで死亡はない。
 暴行事件の容疑者のなかに、ジャンと呼ばれる巨漢がいた。
 グローブのような手で、相手の首を掴み、締め上げる怪力の持ち主だが、普段は夜の歓楽街の用心棒をしながら、ひとり、ひっそりと暮らす、おとなしい男だった。
 ……「彼─ジャンは夜の街で、マダムと知り合った。母親がわりをマダムに求めたらしい」「マザコンでしょうか」「年上の女性によく、子守唄をせがんだそうよ」「その子どものような彼が…」「ジャンは頼まれたからやったと刑事に話した。検死でも現場検証でも争ったあとは、ない」  「チノ教授」パイプ椅子に掛け、テニスシューズの脚を組み、リサに頷く。
 「マダムは、首を絞めてくれと…」 

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