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狼からの招待状

第7章 ブルー・クリスマス

「ソンニン、どうぞ」顔を上げると、はにかんだ表情のジャスミン。
 ブランデー・チョコレート。ウイスキーのかたち…色鮮やかな包み紙。


 自室に戻り、コートを取る。淡いみずいろの薄手のコート。窓辺による…白い小さなクリスマスリースのイルミネーションが点滅…窓硝子の外は、静寂の闇の聖夜。
 タクシーのなかから見た霧の街は、時間が止まっていた……
 (グレ兄さん。あの泥棒にお小遣いあげたとか─)いまいましげな口調と、拗ねた口元がほほえましかった。
 (まだ、行方がわからない?)(ジャスミンよ、またここに来るかもよ? 今度は取っ捕まえよう…ブン殴られるまえに、さ)脇から、冗談めかして云う青年─長身にドレッシーなシャツが映える。
 少年の行方は誰も知らず。…グレとも、ホストグラブの先輩後輩の間柄…それもいっときの。
 部屋着に替えて、デスクに座る。デスクは白い横長のもので、傍らの棚を占める医学書や解剖事典を、何冊も広げられる。
 (そうだ…クリスマスプレゼント)
ちいさな英字新聞の包装の紙箱に、赤と緑のリボン。
 蝶結びのリボンを解く。蓋の下には、親指ほどの胡桃割り人形。キャンディーにチョコレート、マシュマロと風船ガム。

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