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狼からの招待状

第7章 ブルー・クリスマス

“リサさん Merry Christmas☆ またおいでください”
 フライが書いたらしい、メッセージ入りのカードも添えられている。
 (胡桃割り人形─昔。人形劇で、─絵本と童話のマンガでも見た…)
 手のひらの胡桃割り人形は、幼い時節のクリスマスの思い出に、繋がる──
 (ヒロインの少女。バネッサ…?)─影絵の物語は美しかった…。(鼠の、呪いが、悲劇を)─胡桃割り人形を、白いデスクに立てた。
 畏まって、厳めしい胡桃割り人形。(美青年が姿を変えた…)─笑顔が、自然と溢れてくる。
 ふっと、窓の外を見上げ…、(人形…?)
…聖夜の夜空を、飛んでゆく…ふわふわの長く伸びた髪、ドレスにブーツを履いた姿。
 時が凍る静寂の降誕祭前夜─不吉な兆しの彗星のように、人形のシルエット、幻影が彼方の闇へ見る間に、消え失せた。


 フライがダートを投げる。
 「フライ兄さん」エプロン姿のリューが、声を掛けた。ダートは的の真ん中に刺さっている。
 「今日マスターは」「知り合いのレストラン。仕事頼まれて行ってる」 カウンターに入る。タンガリーシャツにジーンズのフライは、黒いサロンエプロンをつけ、降誕祭の特別メニューの下拵えにかかった。

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