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狼からの招待状

第7章 ブルー・クリスマス

 財界のゴシップ雑誌らしく、女性誌に似た体裁の記事が、どのページにも並んでいる。
 …‘ハリスのシューズ屋’の創業者、ツトム・Y・ハリス氏が還暦を前に再婚した。新妻は23歳の元モデルで、ハリス靴店のイメージモデルも務めた竹内悠佳(ゆか)さん。 
 二人の年齢差は36歳だが、前夫人の眞樹乃さんを異国にて、不慮の事故で亡くしたハリス氏の新パートナーの誕生に、多くの祝福や励ましが寄せられている。’……
 写真の若い女性は白ベールを付け、肘上までの長い白手袋に清楚なデザインのドレス─‘総資産数十億円のハリス氏。悠佳さんのウェディングドレスも、高級ブランドのデザイナーの手によるもの’……ページの片隅に白黒の写真…
 ‘故・眞樹乃夫人’
 ─和服姿の婦人が盛装した人々や黒服のボーイに囲まれている。笑顔だが、どこかに大事なものを置き去りにしたような、寂しさがある…変死体マダムの生前写真だった。



 「行方不明?」ぼさぼさの髪に、ボタンダウンのよれよれのシャツ─深い緑のコーデュロイ。
 「心あたり、は…」リサがかぶりを振ると、「…そうでしょうね」自販機のコーヒーを飲み干して、『New Economy』の記者は立ち上がった。
 高身長…。

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