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狼からの招待状

第7章 ブルー・クリスマス

「一生、一緒に…そばにいて欲しい人」「はい?」「同じ場所に帰れるようになればいい」「…」
 ─熱いココアの匂い。喫茶コーナーから漂ってきたらしい。
 「ユノお兄さん。最後にふたりでお茶を飲みましょう。お会いするのも、今日だけです」
 両開きのドアから、腕を組んだ若いカップルが、笑い合いながら入って来る。



 「ユノお兄さん。考えてることがあるみたいですね」ホットレモンの湯気に曇るガラスマグ。
 「う…ん」ミルクティーに白砂糖をさらさら─「今日で最後って」「はい」「どこか、旅行?」
 ふふ、と笑うテディ。 「ユノお兄さんとは、お会いしないということです」「お別れか」「はい」黙り込み、ティー・スプーンを動かす。
 向かいの小さな丸テーブルで、学生らしいカップルが、軽くキスを交わし合う。
 「きみとは…1年ぶりだけど─急に、なぜ?」「ぼくの役割は終わったからです」「…」クリスマスソングをベルがゆるゆると、奏でた。夕刻を告げたらしい。
 「ユノ兄さんは、ぼくの云うことを、ちっともきかない」「あぁ…」ちいさく、笑うユノ。
 「だから…?」「姉を、イボンヌを─食い止めたい」「え…!?」

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