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狼からの招待状

第1章 幻都

 若い男は、熱した平たい鍋に調味料を投げながら、フライと名乗った。(蝿みたいにうるさいらしいから…俺)コンロの黒い缶のビールを、ひとくち煽り、(ビールに合うの、作ります)コンビーフと、塩を振った香草とセロリを細かく刻み炒め…仕上げにパセリを千切り入れた。黒胡椒の香ばしい匂いが、カウンターに漂う。
 「こんな旨いの…初めてだよ」照れた顔で、「ここは、料理は野菜の煮込みか、ジャガイモ茹でるくらいだからでしょ─」フライパンに火を入れた。
 「もう充分だよ…」フランクフルト・ソーセージを、冷蔵庫から取り出すのに云うと、「そろそろマスター、重役出勤。食べてこないから…余分に作るし、夜食に持っていって下さい」キャベツにナイフを入れた。
 (優しい…気が利く、好青年)2匹のライオンの缶ビールを、口に運ぼうとすると─「オソォセョ」マスターがすぐ後ろにやって来ていた。
 「ヒョンニン(兄貴)」「美味そうだな、…外までいい匂いがした」カウンターに入り、「最初にいらした夜。多く頂きました。今晩は頂戴しません」「こっちも黙って、帰って─」「お詫びもさせてください」

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