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狼からの招待状

第1章 幻都

 「ミアネ(すいません)」頭を下げ、麦わらを差し出す─舌打ちをして、受け取ると、「チェソゲヨ(申し訳ないです)」足早にユノの側に来て、謝りを云い、道端で項垂れる若者に掌を出すと─おずおずと、折り畳んだナイフを載せた─ため息をついて、Gパンのポケットに滑り込ませ、「パルリ(早く)! 先輩に謝れ」怒鳴った。



 「弟どもが、恥ずかしいことを…怪我無いですか」頭を下げながら弟たちが去ると、訊いてくる。「あ、確か─《アンゲ》の」「はい」最初の日、マスターと話し込んでいた彼─は、麦藁帽子を頭にのせ、「俺これからジム…、今夜おいでください」走り出す背中に、「行くよ…」答えると、「開店まえに、来てください─お詫びに夕飯おごります」帽子を傾け、蜜蜂のように飛んで行った。



 「これも旨いですよ」パエリアを口いっぱいに頬張るユノに、ライオンに似た獣が2匹向かい合う缶のビールを出す。
「タイのビールだっけ」「ギネスより、軽い味でしょう」缶を大皿の脇に置き、「うん、飲みやすい」チキンと海藻のスープ椀に匙を入れる。
 ……開店時間まえに扉を入ると、麦藁帽子の男が、鍋から良い匂いをさせていた。帽子の代わりに紺のバンダナをしていた。

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