
狼からの招待状
第1章 幻都
プラタナスはすっかり葉を落とし、近づく冷たい時季を待つ街角─。
郵便ポストを思わせる二階建てバスが、呑気な象のように、ゆうゆうと舗道を曲がる。
晴れていた空は曇りはじめ、物憂い午後─泥の河の灰色に、塗り込められる。
─後ろから、はしゃぎ声がして、それが軽やかな笑い声に変わった。
振り向くと、濃い褐色の髪に、黄色いリボンを編み込んだ幼い女の子が、父親らしい男性の膝で、黒い瞳をくりくりさせながら、窓の外を、見ている。
車内は観光客が殆どらしく、スマホを窓に向けて街並みを撮ったり、ガイド本を広げてのお喋りに、夢中のグループもいる。
乗客たちは、二階建てバスの短い旅を楽しんでいるらしかった。
通りが急に狭くなり、ショーウィンドが迫ってくる。写真集が並んでいる─フォトブックの専門書店のようだった。脇に壁に沿った小路が、奥に伸びている…(チャンミン)…濃い色の髪、背が高く、Gジャンの…(チャンミン)─バスは信号をゆっくり、通り抜けた。
郵便ポストを思わせる二階建てバスが、呑気な象のように、ゆうゆうと舗道を曲がる。
晴れていた空は曇りはじめ、物憂い午後─泥の河の灰色に、塗り込められる。
─後ろから、はしゃぎ声がして、それが軽やかな笑い声に変わった。
振り向くと、濃い褐色の髪に、黄色いリボンを編み込んだ幼い女の子が、父親らしい男性の膝で、黒い瞳をくりくりさせながら、窓の外を、見ている。
車内は観光客が殆どらしく、スマホを窓に向けて街並みを撮ったり、ガイド本を広げてのお喋りに、夢中のグループもいる。
乗客たちは、二階建てバスの短い旅を楽しんでいるらしかった。
通りが急に狭くなり、ショーウィンドが迫ってくる。写真集が並んでいる─フォトブックの専門書店のようだった。脇に壁に沿った小路が、奥に伸びている…(チャンミン)…濃い色の髪、背が高く、Gジャンの…(チャンミン)─バスは信号をゆっくり、通り抜けた。
