
狼からの招待状
第1章 幻都
海に向かい、歩き出す─陰気な声の海鳥が、荒れた沖へ飛ぶ。
墓石を思わせる岩が連なり、海から上がった怪物が、不意に姿を現しそうな巨岩もあった。
唸りのような音が風に混じり、海獣のコクソン(哭声)めいた響きとなる。
断崖が波を受けた…黒い岩肌が急に霞む…。車に戻り、冷えた頬をさすった。(事故は─海に近い道路で、お二人が夜のドライブ…急に霧が出て、前が見えなくなり…起きたと──)キム侍従の話が、耳元で甦る……海霧(ヘム)はますます、濃くなってゆく──(ユノ。南の島を、買いましょうよ)(いいね、ふたりきりの無人島遊び…)(僕、砂浜で料理してみたい)(バーベキュー? 海鮮丼かな)(生牡蠣を、ドレッシングして…)(ワインと合うな)(シャンパンも開けたい)(牡蠣は俺が採るよ。スクーバの免許いるな)(サンオ『鮫』でも獲るんですか…)──岩の間に黒影が動いた気がした。海の死霊のような…ゆらゆらと…(チャンミン)エンジンをかけ、ギヤを入れ、走り出す──。
…黒馬に跨がった黒頭巾、覗く骸骨の死神─大鎌を振り上げ、黒いマントが霧を引き裂く……
墓石を思わせる岩が連なり、海から上がった怪物が、不意に姿を現しそうな巨岩もあった。
唸りのような音が風に混じり、海獣のコクソン(哭声)めいた響きとなる。
断崖が波を受けた…黒い岩肌が急に霞む…。車に戻り、冷えた頬をさすった。(事故は─海に近い道路で、お二人が夜のドライブ…急に霧が出て、前が見えなくなり…起きたと──)キム侍従の話が、耳元で甦る……海霧(ヘム)はますます、濃くなってゆく──(ユノ。南の島を、買いましょうよ)(いいね、ふたりきりの無人島遊び…)(僕、砂浜で料理してみたい)(バーベキュー? 海鮮丼かな)(生牡蠣を、ドレッシングして…)(ワインと合うな)(シャンパンも開けたい)(牡蠣は俺が採るよ。スクーバの免許いるな)(サンオ『鮫』でも獲るんですか…)──岩の間に黒影が動いた気がした。海の死霊のような…ゆらゆらと…(チャンミン)エンジンをかけ、ギヤを入れ、走り出す──。
…黒馬に跨がった黒頭巾、覗く骸骨の死神─大鎌を振り上げ、黒いマントが霧を引き裂く……
