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狼からの招待状

第4章 迷路 -MIROH-

スマホにも何の連絡もない。
 (ユノ先輩)降誕祭の夜のなかのグレ。その傍らを、小さな黒い影が通り抜けた。



白い霧のなか。ユノは歩みを止める。冷えた唇から吐く白い息─
 (また…、迷った?)
 スマホをコートのポケットから出しかけて…
 ……丸めた背中が、舗道の向こうを歩いて行く……
 ひょろりとした後ろ姿が、何かを引き摺っていた。
 クリスマス。サンタクロース。…橇?
 手押し車を引き摺って、降誕祭の夜歩く─項垂れて、のろのろとした足取りで─。(チャンミン─?)
 荷台に白い大きな袋。袋はあちこちに、まだらな緋色が─。
 近寄ろうとブーツの足を踏み出した。黒いアスファルトが、濡れている。
 (霧?) 遠く鈴の音─サンタクロース……
 袋の口が開いて、中身がこぼれて…長い、黒いものが覗いて、「─チッ」舌打ちしながら、それをわしづかみ、袋に投げ入れた。
 (チャンミン)
追いかけようとして、肩を掴まれ、振り向く。平手打ちがとんできた。
 「返せ」また平手打ち…「返せ。お前の弟から」…「取り戻してこい!」黒のロングヘア。スレンダーな身体に青いワンピースと赤いカーディガン。

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