テキストサイズ

狼からの招待状

第4章 迷路 -MIROH-

片手に大きな紙袋を下げたフライは、「食欲はありますか、マスターからのお見舞い持って来ました」ミニテーブルに袋を置き、パンの包みや缶詰のスープを取り出す。
 「これは温かいです」ステンレスのボトル。
 「有難う。いろいろと」ユノはベッドに座り込む─。
 「ユノ先輩が無事で」フライは袋の中身を並べ、「良かった」笑みを浮かべ、「ニュースを聞いて…。あ、これ」ポケットに手を入れた。
 「グレからの手紙です」白い角封筒をユノに手渡した。
 「先輩。バスに乗ってた人は気の毒だった…けど」顔を上げたユノに、「良い報せもあります。─その手紙にも書いてると思う。チャンミンさんが、意識が戻りそうって…」ユノの頬に、紅味がさした。
 「侍従さんの話だと、時々、目を開けて…何かしら云うとか」「本当?」笑って、「グレが聞いたから…本当でしょう」
 「とにかく─、何か食べて。ユノ先輩まで、病気になってしまう」電気ポットが沸くのを見て、「温かいの淹れましょう」ココアの缶を手に取った。



 「食べられましたね、ユノ先輩」「うん…。久しぶりに食べ物の味がした。…旨かった、ごちそうさま」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ