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ぼっち─選択はあなたに─

第18章 バトルトーナメント【6回戦】

 メキユは一瞬躊躇するが、包丁に向かって手を伸ばした。しかし包丁はメキユに見向きもせず暴走する。

 ──まさかまだ闇の魔力に操られている!?
 誰もがそう思い、息を飲んだ。
 ユッキーメは何かあればすぐ対処できるよう、胸元からダーツの矢を取り出した。

「ふっ!」

 ユズリノは包丁からの攻撃をギリギリでかわすと、ヒールで地面を叩き鳴らしながら素早く逃げた。
 あの研ぎ澄まされた刃で斬られたら、弓矢で防御したとしても簡単に斬られてしまうだろう。そうすれば今度は自分に武器が無くなる。──いや、アレがあった、《禁断の旋律》が。

 町を追い出されて旅をしていたユズリノは、ある男に出会った。フードを被っていて顔は見えなかったが、リュートという楽器を持っていた。
 その男が言うには、世界には《禁断の旋律》があるという。それを歌なり楽器なりで奏でると呪いが発動する。その呪いは様々で、奏でる本人が望んだことが形となるそうだ。

 男はなぜかそれを自分に教えてくれたが、使うことはないと思っていた。使う機会さえないと。
 しかし今、闇の魔力に対抗するにはこれしかない。

「危ないっ!」

 その時一瞬のスキを狙って、包丁がユズリノの右腕を斬りつけた。

「くっ…!」

 ユズリノは迷わず天に向かって複数の矢を放ち、《禁断の旋律》を口にした。


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