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だから愛して

第1章 だから愛して

         21

 でも、内容を褒めてはくれませんでした。
 「先生
  どこが
  悪いんでしょうか」
 「この作品のむこうに
  読者がいません
  三崎さんの
  思いを書いているだけ
  という感じです」
 それからは、視点や描写と叙述の違いなどなどの、基礎知識をいろいろ教えてもらいました。
 小村先生と、かなり打ち解けてきたとき、わたしが書いた小説について、詳しく話してくれました。
 いろいろ勉強してきたので、先生の話がよくわかるようになったからだそうです。
 わたしの小説は、女性の書き方がおかしいと言われました。
 小説に、どんなことを書くのかは作者の自由だけど、読んだ人が納得できるものでなければならないと、言ってくれました。
 わたしの小説は、結婚する相手でなければ、セックスをしてはならないという、考えで書かれていると言います。
 そういう女性もいるだろうけど、その考えの基になっているのが、女性の自立というのを抜きにしてはいないだろうか、と言うのです。
 そして、結婚する相手とだけセックスをするというとき、その女性の性欲をどう考えていますか、と聞かれました。
 わたしは、よくわかりませんと言いました。
 先生が、詳しく話してくれました。
 三崎さんの小説では、登場する女性には性欲がないように感じられると言うのです。
 結婚した相手とだけセックスをするというのは、夫から求められたときだけセックスをするという感じで、妻の方からセックスを求めるということがないのではないかのように思える。
 それが、自立した女性と言えるだろうか。
 私は、女性にも性欲があるのがあたりまえだと思う。
 女性でも、セックスをしたくなったときに、わたしセックスをしたいと言ってもいいはずです。
 それなのに、三崎さんの小説の中の女性は、結婚した相手に、性的なことでは従属するのが美徳だと思っているように感じる。
 そこのところを、一度よく考えてみてはどうでしょうか、と言ってくれました。

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