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だから愛して

第1章 だから愛して

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 お寿司を食べる話をしてもしかたないと思いますので、智さんとわたしが、どうして愛しあうようになったのかを、話したいと思います。
 わたしは、子どものころから、本を読むのが好きでした。
 小学校の六年生のとき、短い小説を書きました。
 中学生のときも高校生のときも、ずっと小説を書き続けていました。
 でも、誰にも書いていると話したり見せたことはありません。
 自分だけの楽しみ、という感じです。
 そんなに受験校というのではありませんでしたが、本を読んでいることや、小説を書いていることを、友達に言えないような雰囲気がありました。
 受験校でなくても、テストはたくさんありましたし、どうしても進路の話になってしまいます。
 でもそれなりに、学校生活は、楽しいものでした。
 本を読んで、
 生きるとは何?
人間とは何?
 などを、考えることはありました。
 大学も、文学部を選びました。
 日本近代文学史のコースです。
 大学に入学してすぐ、市民講座の「小説の書き方」という教室に参加しました。
 そこの先生が、智さんです。
 フルネームは、小村智さんです。
 面白い講義でした。
 何回目かの講義のあと、短編小説を書いてくるという課題がでました。
 先生が、わたしの書いた短編小説を、褒めてくれたのです。
 テーマもいいし、話の筋もよく書けている、という評価でした。
 わたしが、いままでにも、たくさん書いてきましたと言いますと、
 「三崎さんは
  どうして
  小説を書きたいの?」 
 と、先生が、聞いてきました。

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