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Melty Life

第5章 本音








 一夜明けた。

 昼近くまで授業に出たあかりは、四限目の予鈴が鳴る直前、倒れ込むように保健室の扉を開いた。


「病院へ行った方が。こことか、ちゃんと縫合してもらわないと」

「見た感じより痛みませんし、大丈夫です。深いとこは、やっぱり絆創膏貼っとかないとダメでしたね」

「さっき半泣きだったじゃないの」

「薬が切れた時は、痛かったですけど……」



 生成りのカーテンが日差しをぼかす、白い空間。生徒が横たわるための一角には白いカーテンが降りていて、最低限の色彩しか目に入らない。

 徹底した清潔さが織りなす空間は、余計に気分が悪くなる。


 あかりは育ての母親よりひと回りは歳上に見える保健医に、スカートと下着だけ残した身体を晒していた。
 キャミソールから伸びた腕に、褐色の二本線が幾筋も入っていた。焼け焦げた皮膚の裂け目から、今にも血が滲み出しそうだ。いつのものか思い出せない打撲跡まで薄く残っていて、先日、よく小野田が顔色を変えなかったものだと感心する。自分の目では確かめられないにしても、さっき薬を塗布してくれた保健医のあからさまな反応からして、多分、背中も似た状況だ。


「重症だわ、どうしたらこんな傷になるのよ」

「色々ありまして」

「まさか親御さんじゃないでしょうね。たまにいるの、貴女みたいな生徒」



 条件反射的に否定した。

 もちろん嘘だ。

 ただし親によるものでないというのは、間違ってはいない。

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