テキストサイズ

Melty Life

第5章 本音




 昨夜、あかりは咲穂を問い詰めた。

 咲穂は、未だに水和に処分が下されることを望んでいるようだった。あの女の嫉妬のせいで怪我をした、後遺症が残っていたら、刑事沙汰にしても良いほどだった。そう言うと咲穂は両手でしおらしく顔を覆って、泣く真似をした。それでいて声高らかに、入学してからあの日までの間にも、水和から様々な被害を受けたと妄言を吐いた。咲穂の水和への罵りようは、聞くに耐えないものだった。

 両親達がやってきて、彼らは咲穂に加勢した。

 あかりは水和の世話になっていること、慕っていることを話した上で、彼女の安全面を考慮すれば全ては話せないにしても、彼女の立場を悪くしないで欲しいと懇願した。咲穂からすれば、あかりの言い分は自分が侮辱されている気分になるの一点張りで、水和の悪意も許したくないと頑なだった。


「花崎さんの件ね。先生も、困っていらっしゃる。宮瀬さんの妹さんだったなんて。私は彼女をたまに見かけることがあるわ、お人形さんみたいに目立つけれど、彼女が親しくもない子をいじめるイメージは、私にも湧かない」

「水和先輩は、そんなこと絶対しません」

「それで言い合いが暴力に発展したというわけ?」

「咲穂に、嘘を認めて欲しいって、……理不尽だけど頭を下げました。あの、先生、このこと他言は──…」

「他の先生がたに話しても、貴女のためにならないんでしょう。だからと言って、生徒指導部でもない私に花崎さんの件で口を出せる権限はないし、勝手なことはしないわ」



 私的な事情を親しくもない教員に打ち明けて、どうなるのだ。

 どうにもならない。

 それでもあかりは、誰かに聞いて欲しかった。水和のために何かしたいのに、何も出来ないもどかしさは、傷の疼きより耐え難い。


 咲穂は、あかりの頼みが彼女の被害を取り下げるに値するほど切実かを、態度で示せと言い出した。


 …──私が後遺症を負うかも知れなかったの。歩けなくなるようになるかも知れなかったの。

 お姉ちゃんが一生残るような傷物になったら、愉快だから考えてあげてもいーよ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ