
Melty Life
第5章 本音
いつから、こんなに臆病になったのか。いつから、頭より感情が先走るようになったのか。
吊り橋効果で水和の好意など得たくないのに、とめどない言葉はどれもあかりの本心だ。
水和の指先があかりのこめかみから流れる髪を撫でて、頬をくすぐる。舞台を離れたところでも、こんな顔を見せるんだ……と、水和のとろけそうな目許にくらくらするあかりに、吐息がかかるほど彼女の顔が近づいてくる。目を閉じたあかりの唇に、忘れようのはずのなかった質感が被さる。
胸が壊れそうになる。
触れ合って目尻が熱くなるキスなんて、相手が水和に限ってだけだ。
永遠のように長い刹那、前にあかりがそうしたように、水和があかりに触れていた。しかし水和は、角度を変えて同じキスを繰り返す。
同じではない。そよ風に揺れる花びら同士がこすれ合うのに似た優しいキスは、三度、四度、と重なるにつれて、愛おしさが増す。もとより募るばかりだった水和への想いが、あかりの内側で紐解かれていく。
「恥ずかしくなるほど気持ち良いんだ、……初めてなのに」
「はい、……」
「あかりちゃんは?」
「夢でも見てるみたいです。初めてじゃないのに、初めての気持ち」
「そっか、妬いちゃうな」
「初恋は、水和先輩です」
「構わないよ。あかりちゃんをもっと知りたい。自分のこと話すのは苦手だから、……もっと来て」
