
Melty Life
第5章 本音
「水和先輩にとって、今もあたしはよく知らないヤツですか」
「あかりちゃん?」
「前、キスだけじゃ我慢出来なくなりそうで、帰ったのに。急にお邪魔したあたしにこんなに無防備で、……それか水和先輩にとって、あたしってそこまでとるに足りない存在ですか」
答えなどいらない。何年でも、きっと何十年でも待つ。
心に決めていたはずなのに、あかりは一秒でも長く一緒に水和といたくて、一ミリでも近づきたい。一ミリの隙間もないくらい、近づきたい。
水和の膝があかりに距離を詰めてきた。
熱々の紅茶を喉に流してうっとりと息をついていたはずの上級生は、ワンピースの内パニエにくるまれた、見なくてもすべすべだと思い出せる膝を、正座しているあかりに向けて、僅かに上体を乗り出す。
「あかりちゃんにとっても、私はまだ価値がある?」
「当然です」
「今見えてる私が、全部嘘でも?」
「水和先輩が着ぐるみでも、本当はこんな風に引きこもりでも、大好きです。愛しています」
自分でも驚くほど、迷いなかった。変わりようのない想いをありのままに伝えるのに、躊躇う方が難しい。
生きることをやめられないなら、まだ力が残っているなら、水和を諦められない。
立ち上がれないほどには打ちのめされていない。水和に捧げられるものがないのは、今も以前も同じじゃないか。
あかりの冗談を受けた水和が、小さく笑った。数秒置いた水和の息が、あかりの肌の奥にまで緊張を伝える。ブルーグレーの真摯な目が、あかりを捉える。
「あかりちゃんに会いたくて、扉を開けたんだよ」
「そう言ってもらえるだけで嬉しいです」
「言ってるだけじゃないよ。もう愛想尽かされたと思っていたから。来てくれて嬉しかった。私だって俗欲はあるよ。キス以上のこと想像して、どきどきすることだってあるよ」
「相手が、……あたしでも?」
