
Melty Life
第5章 本音
しかし小さな世界の中で自分をどれだけ肯定しても、集団意識が正当になる社会に出れば、きっと水和は昔と変わらず暗くて非力な雑草だ。
ピーンポーン…………
チャイムが鳴った。
どこへ出かけるのでもないのにピンク色のギンガムチェックにマーガレットとリボンのプリントが散らしてあるワンピースを着て、洋服に合わせて淡いピンクの化粧をしたあとは、たまに送られてくる百伊からのLINEに返信しながら、部屋でのんびり過ごしていた。つまり暇を持て余していたのに、思いのほか時間は過ぎていて、時刻は四時を回っていた。父親が帰ってくるにしても、母親が帰ってくるにしても、早い。
無視を決め込むつもりでいた水和の耳に、また、やたら鼓膜に障るチャイムが響いた。
誰?
どうせどこかの営業だろうが、三度も鳴ると、さすがに重い腰を上げる。
階段を降りて恐る恐る返事をすると、水和に劣らず遠慮がちな声が返ってきた。高くもなく低くもない、心地良いほどの掠れた甘い声。切ないような波打ちが、耳を伝って水和の胸の奥に落ちる。
「あかりちゃん?!」
「良かった、すみません、しつこく鳴らして……」
「ううん。営業か勧誘だったら怖いなって。今一人だから」
どこか元気がないのは、気のせいだろうか。以前のあかりは、もっと積極的とも言える感じで、水和を追ってきてくれていた気がする。
水和はあかりを部屋に通した。水和がお茶を準備するため席を外すまでの間、あかりが手短に話したところによると、彼女は演劇部の三年生達に訪問を促されたのだという。
