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Melty Life

第5章 本音




 あかりが血を分けた妹なら、協力出来ると思った。

 自分の甘さに嫌気が差す。

 つい先日まで、水和を巡って、千里はあかりと穏やかながら対立していた。それが十七年も前の大人達の身勝手を掘り返すなり、手のひらを返したように兄妹として仲良くやっていこうと割りきれるはずがない。実際、前より溝は深まったんじゃないか。


 昼休みの食堂は、放課後のファーストフード店並みに賑わっている。

 話の内容が内容なだけに、千里はゆうやと隅のテーブルに着いて昼食をとっていた。家政婦の鈴木が弁当を持たせてくれた日に限って、ゆうやが食堂の気分だと言い出したのだ。
 夏限定の冷やし中華に舌鼓を打つ友人に、千里がここ数日の出来事を説明すると、おそらく三度の飯より水和を重んじる友人は、箸を動かすペースが瞬く間に落ちていった。


「花崎さんは?」

「昨日から欠席。笹川さんに毎日睨まれてる」

「お前の責任になってるのか」

「生徒代表の俺が何とかしろって。好きで登校拒否してるわけじゃない花崎さんが、部活の稽古にまで遅れをとるって」

「あれだけ尋問されていれば、学校にも来たくなくなるな。俺ならノイローゼになるぜ」

「お前はしょっちゅう先生に怒られてるくせに」


 これだけ真剣に、千里の話に耳を傾けているゆうやのことだ。隼生の説得か、現場にいた第三者の生徒達を見つけ出して証言を得る協力を、ゆうやに仰げるものとばかり考えていた。千里にとって、ゆうやは実際の年月より何年も長く一緒に過ごした親友に等しい。惹かれた相手が同じと分かった時も、恨みっこなしで告白した。惹かれた相手が同じというのも、それだけ千里の深い部分が、ゆうやに共鳴しがちだからだと思う。

 だから千里は、ゆうやが首を縦に振らないとは思いもしなかった。

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