
Melty Life
第5章 本音
「あたしさえいなければ、あんなことにならなかった。来須先輩のお父さんは多分よくある浮気で済んだかも知れなかったし、だったら水和先輩だって、咲穂にあそこまでされなかった」
「それは……」
「さっきの、……多分、あたしの本当のお婆ちゃん。あの人だって、消えろって言ってたよね。来須先輩とあたしに向かって」
「…………」
「来須先輩はともかく、今からでも本当に消えれば、何もなかったことになるんじゃないかな。あたしがいなくなれば、どれだけの人が助かるだろ」
「…………」
証拠がなければゆすれない。あかりという不義の証拠がいなくなれば、もしかすれば咲穂の両親は来須のスキャンダルを公にしたところで、裏づけが出来なくなるのではないか。都合良く殺してくれる相手に全く心当たりがないにしろ、想像ばかりが膨らむ。
「そういう冗談、聞きたくないです……」
蒼白な顔で、熱に浮かされたように何かに懺悔していたさっきまでとは一変して、知香は抑えがたい情念でもこもった目であかりを見上げた。
何で、私じゃ、ダメなんですか。
躊躇いがちに伸びてきた知香の手は、思いのほか力強い。
引き寄せられた手首が刹那甘く脈打ったかと思うや、あかりの片手が、布一枚にくるまれただけの胸の丘陵に浅く沈んだ。
