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Melty Life

第5章 本音


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 帰宅を急かす母親に、学校の上級生を一人連れて帰ると伝えていた知香の強引な誘いに押されて、あかりは彼女の家を訪ねた。

 急な訪問を一切言及しない両親との親睦を何とかやり過ごして、浴室を借りて、ようやく知香と二人きりになれた時、あかりは限界を感じていた。娘が家に友人を招いたのは初めてだと喜ぶ親達を落胆させないだけの、当たり障りない高校生らしさを演じる行為が、あかりを余計に消耗させた。今までにも眞雪の家にはさんざん世話になってきて、作り笑いも要領を得ていたはずなのに。


 想像通りの、控え目でも随所にさり気ない可愛らしさが取り入れられた知香の部屋は、彼女がいかに愛されてきたかを物語っていた。眞雪の部屋にも似た雰囲気が立ち込めている。ふわっとした、落ち着ける空間。


 部屋のあるじの顔色は、あかり以上に悪かった。

 ごめんなさい、ごめんなさい、と、不可解に詫びる知香は、理由を訊いても口ごもるだけだ。ただうわ言のように反復して、顔色は蒼白さを増す。



 風呂上がりの知香は、薄手の部屋着に、無防備な身体をじかにくるんだだけだった。下着はショーツの他に何もつけていないのが、ひと目で分かる。湯気の余韻を残した、湿った少女の香りが、目の遣り場に窮するあかりを追いつめる。

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