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Melty Life

第5章 本音




「親、心配しない?もう七時」

「電車で連絡入れました」

「大丈夫だった?」

「早く帰れって」

「じゃあ」



 早く帰って。今にもおかしくなりそうだ。これ以上、耐えられそうにないから。…………



 願うような気持ちで、あかりは咲穂が親のLINEに従うのを待つ。



 泣いても仕方ないのに、泣きたかった。叫びたかった。

 何もしたくない。

 生きていればどこかで願う。一人になりたくないと。何かを信じてみたい、と。

 身体中の精気がなくなるまで泣き尽くしたあとは、どこかで迎えを待っていれば、もしかすれば初夏の夜闇が連れ去ってくれるかも知れない。
 誰にも望まれないで生まれてきて、いや、あかりが存在したことで、罪ない女が刻印を背負った。両親があかりに向ける憎悪の根拠が分かった。どれだけ彼らと打ち解けようと努力しても、愛を得られる望みはない。あかりの顔を見る度に、あの二人は、親族の瑕疵を否が応でも現実に突きつけられてきたのだ。



「帰りません。あかり先輩が好きだから、……帰りません」



 好き、とは、何を定義にそう言えるのか。

 あかりは、夜闇に立ち尽くす自分自身と知香をどこか遠くから傍観する。

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