
Melty Life
第5章 本音
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…──私を好きだと言ってくれる、あかりちゃんに見る目がないって言いたいわけじゃない。
ただ私は、自分の全部を見せられていないし、普段は隠れている部分が見えた時、あかりちゃんが落胆しても気にしないから。
水和とLINEで話すようになった頃、彼女がこんな話をした。
誰にでもある、ごく当たり前のことだ。他人が他人の全ての面を理解することなど不可能だなんて知っているし、水和の絵文字やスタンプを使った軽い調子に合わせて、あかりも雑談のノリで返信した。
当たり前のことを、わざわざ話題に上げた水和の憂いは、もしかすればあかりの想像以上に重みを伴っていたのかも知れない。
それまであかりの外見が好みだからと近づいてきた女子達の、夢見がちな瞳の煌めきを思い起こせば分かる。今もあかりの隣に並び歩いて、時折どちらからともなく目を動かして視線が絡んだ瞬間、はにかんだ笑顔をほころばせる知香を見ていれば、彼女にあかりのどこまでが見えているのか、いっそ後ろ暗くもなる。
「引かないの?」
「何がですか」
「あんなに避けてきた来須先輩とあたしが、ああいう関係だったなんて」
「引けません。……あかり先輩が良いって言って下さるなら、今日は一緒にいさせて下さい」
「知香ちゃんらしくない。親と喧嘩?」
「新入生歓迎会の昼休み、あかり先輩が私を連れて逃げてくれて、心配してくれて、心強かったんです。だから、今度は私がお節介焼きたいです」
誰も助けてくれない。
救いなど求める方が無駄だ。
求められて、あかりが誰かに何か出来た試しもない。
知香へのいじめが軽減したのは、俯いてばかりいた彼女が少しずつでも意思表示が出来るようになってきたからだろうし、受験勉強から解放されて高校にも上がれば、女子はネガティブな感情を同級生に向けている暇もなくなる。
生まれてから死ぬ日まで、人は一人で生きていく。
それを当前としているあかりに、知香は純粋な目を向けている。
水和があかりを持て余すのが、今なら分かる。
