
Melty Life
第5章 本音
* * * * * * *
翌日放課後、来須は指示した通りに例の苗字の親族からの年賀状を持って登校したあかりを、タクシーに乗せた。
連日何か言いたげに身辺をうろついていた来須も、あかりにとって気分の良いものではなかったが、いざ胸に抱えていたものを吐き出すと、今度は人望厚いはずの優等生は隠れていた人間性の歪曲を見せた。
来須なりに躊躇して、最低限悩んだのは分かる。
それにしても、あかりが昨日まで正真正銘の家族だと思い込んでいた顔触れが、ただの遠い親戚で、仮にも恋仇と認識してきた淡海ヶ藤の生徒会長の方が血筋は近いという話を、百歩譲って受け入れたとする。おおよそ平凡な日々の一片に過ぎないどこにでもいる高校生に、昼ドラさながらの出自を突きつけられて、たった一晩で気持ちの整理がつくはずない。だのに来須は昨日の今日で、あかりに生みの親との対面を促したのだ。
年賀状の住所を元に、あかりと来須、眞雪と知香を乗せたタクシーは、一時間も経たないうちに、四人を郊外まで運んでいった。
「行っちゃダメなんじゃないですか。来須先輩のお父さんに流されたと言っても、あたしを産んだ人は、後悔してると思います。思い出したくないと思います。それに、きっとウチみたいな、プライド高い家だろうし」
蒸し返して、誰が救われるのだ。
「そうだね。きっと宮瀬さん一人なら追い返される。だから俺が同伴させてもらうんだ。今から会いに行く人にはうっかり怒鳴ってしまうかも知れないから、その時は止めてくれるかな」
「何で先輩が怒鳴るんですか」
「君のうわべだけの家族が、君をどう扱ってるかは想像つくよ。先週の手首の縄の跡。それ以前にも、不自然な傷あったよな?」
ロープ跡は、小野田と過ごした形跡だ。知香もいる手前、あかりが答えあぐねていると、たった数秒の沈黙を、来須は一方的に肯定だと解釈した。
