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Melty Life

第5章 本音



「…………っ」


 二年生の校舎の付近ならまだしも、ここは裏庭でも入り組んだ小道を進んだ奥に位置する。昼休みにあかりがここにいるのを知っているのは、眞雪と知香、ともか、玲くらいだ。

 どこまでも追いかけてくる来須が、植え込みの影から現れた。


「君にしか話せないんだ」


 …──何言ってんの?


 声に出さなかっただけ、自分を評価すべきだと思う。


「…………嫌いなのは分かったから、話だけでも」

「眞雪先輩も私も、付いてますから」


 眞雪と知香が囁いた。あかりの耳に触れた辺りでそよ風の中に取り込まれていった二人の声は、上手い具合に来須の耳には届いていないようだ。



 来須が話すに、あかりの両親は咲穂が捻挫をした件に関して、学校側から水和に処分を下すよう求めているらしかった。来須の推測では、厳密には、それを望んでいるのは咲穂。
 ただし正確な事実関係と、水和本人から状況の確認がとれていない現状で、それは難しいらしい。万が一外部に漏れた時、学校側が不適切に生徒に罰則を加えたという事実が残るからだ。そのために教師達は、未だに無実の彼女を定期的に呼び出して、求める証言が取れるまで尋問を続ける姿勢でいるらしい。


「おかしくないですか?水和先輩、何も知らないって言ってるんですよね。見てたの咲穂の友達だけでしょ」

「宮瀬さんのいう通りだよ。だけど校長もおじい──…理事長も、宮瀬さんの両親には強く出られない」

「え」

「逆らえないって、言った方が伝わるかな」

「どういうことですか」

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