
Melty Life
第5章 本音
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来須は顔を合わせる度に、あかりに進み寄ってきた。
生徒数は少なくない学校内で、こうも頻繁に、同じ上級生に出くわせるものか。しかも、一応来須は、一部の生徒達が「遭遇出来ればその日はラッキー」ともてはやしている生徒会長だ。あかりには全く理解出来ないとしても。
生徒会長であってアイドルではない以上、学校内にいるのは当たり前だが、それにしてもあれから十日余り、あかりが来須に出くわしたのは十回前後だ。一日に複数回会ったこともある。
「あかり先輩に用があるとか。聞いてあげたらダメなんですか」
「案外、花崎さんからあかりに目移りしたんだったりして。だったら早い内に振って、スッキリした方が」
来須が明確な用件を備えているなら、眞雪と知香のアドバイスに従っていた。しかし水和と彼が抱擁しているのを見かけた翌週、唐突にあかりのプライベートに踏み込んでこようとした来須の様子の気色の悪さが後を引きずっている。柔和なあの佇まいが視界に触れると、反射的に身を翻すのだ。
来須が特定の生徒と交際している話は、今のところ入ってこない。
今となっては、あかりは水和に自分だけを見て欲しいのか分からない。一方で、一度でも憧れて慕った上級生を、軟派な男が射止めたなどと聞いた日には、彼に軽い殺意くらいはいだくだろう。それなら早く水和に何かしら連絡をとるべきなのに、小野田との過失もあって、その上、咲穂の一件が余計にあかりにあかりに後ろ暗さをもたらしている。
咲穂が水和を陥れたのは、あかりが原因の可能性もある。教師はろくに事実を調べようとしない。先週、水和本人と彼女の両親が家に謝罪に訪ねてきた時、あかりは飛び出していきたい思いでいっぱいだった。口を挟みに出て行ったところで状況が悪化するのは目に見えていた。
「あ、いたいた、宮瀬さん」
