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Melty Life

第5章 本音


「…………」


 あの現場を離れる間際、あかりを見かけた。随分と久し振りだった気がする。先週末から来須や彼の祖父のことでいっぱいだった水和には、変わり映えしない学校の雰囲気も、今朝は懐かしかったものだ。

 あかりに妹がいることは聞いたことがある。歳は近くてもあまり仲の良い方ではないらしく、人物像まで聞いたことがない。今の教師の話から合点がいった、なるほど、咲穂という下級生も同じ苗字だ。

 咲穂は、何故あんな主張をしたのか。
 彼女の言い分からして、大勢いる来須のファンの一人のようだが、水和が彼と仲が良いのを知っているようだった。どこか誤解している部分もあったにせよ、それにしてもそれとこれとは別だろう。

 ゴールデンウィークのいつの日か、あかりが旅行に出かけた家族の留守をさせられていた。厚意か言いつけか、家中の掃除までしていたようだった。水和の家族も円満とは言い難いにしても、単に親が古めかしい考え方を子供に押しつけるタイプなだけで、学生の身分である娘に手伝いの範疇を超えた仕事までさせない。

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