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Melty Life

第5章 本音


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 理解されないのには慣れている。昔から数えきれないほどに上る人間が、異質なものでも混ざり込んでいるとでも言いたげな目を水和に向けていた。

 それにしても、水和は可能な限り彼女らの詰問に答えているのに、生徒指導部室の教師達は、断固として猜疑を決め込んでいる。律儀な自分が間抜けに思えてくるほど。


「それでは花崎さんは、同じ階段にいた宮瀬さんが勝手に足を滑らせたと?」

「捕まえようとした時は、間に合いませんでした」

「間に合わないのはおかしいです。他の生徒達の話では、とても近くにいたそうですね。元々、知り合いだったそうですし、揉めていたのではありませんか」

「小さい子供じゃないんだし、一人で歩いていて階段から落ちるなんてことないと思うんですけどねぇ。貴女が宮瀬さんの足を引っかけたという生徒はいますが、貴女が何もしていないと証言してくれる生徒がいません」

「花崎さんね、普段から模範的な人だったら、私達だってもう少し貴女の言い分も証拠があるかを探しますよ。だけどその、髪もコンタクトも、規則違反です。素行が目立たないから黙っていましたけどね、こんな事件を起こされたら、やっぱり見た目がだらしないから、こんな面倒ごとになったんだと反省してもらわないと」

「すみません。防犯カメラを確認してもらって良いですか」

「映らない角度だったの。それも狙っていたんじゃないの?そう言えば貴女、咲穂さんのお姉さんの方とは親しいんでしょ。咲穂さんとは面識がないだなんて、下手な言い逃れですよ」

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