
Melty Life
第5章 本音
「何も出来ないんだな、俺」
「どうした、急に」
「宮瀬さんにも嫌われたかも」
「あいつは良いだろ、お前と俺が特殊なだけだぜ。恋仇のくせして馴れ合ってよぉ」
「いや、そうなんだけど、けどさ」
父親が犯した罪。母親を狂わせた悲劇。
千里が物心つかなかった遠い来し方、大人達の世界で起きた罪過の責任は、いくら直系の子供であっても負う必要も義務もない。知ってしまったからと言って、父親の自分本位の犠牲者達に同情するほど、千里は一人前の大人でもない。
しかし思いがけなかった可能性が開けた今、目を背けないではいられなかった。気にかけないではいられない。祖父しか味方のいなかった、完璧な人物のみが存在を許される千里の家では、両親すら理解者と呼べたことがない。本当な意味で身内だったのは隼生だけという千里にとって、血を分けた妹がいた可能性は、救いにさえなり得る。
