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Melty Life

第5章 本音



 教師達は咲穂を保健室へ連れて行くよう友人達に言いつけて、水和を生徒指導部室へ呼びつけた。
 好奇心を昂らせた生徒達があらゆる推測を交わす。中には痴情のもつれで恋敵の上級生に突き落とされた咲穂を同情する声もあれば、あかりが現場にいたという咲穂の友人達が教師に話している声をようやくの思いで聞き取ったところによると、彼女らは水和が咲穂の足を引っかけたところを見たという。水和の方は、演劇部の一年生に用があって、この校舎に立ち寄っただけだと主張していた。しかし水和の控えめな物腰では、何が何でも咲穂を庇護する闘志を燃やした彼女のとりまき達を前にしては説得力の面で圧される。

 教師らが水和を人混みから遠ざける間際、あかりは彼女と目が合った。


「み、…………水和先輩、……っ」


 水和があかりに複雑そうな微笑みを向けた。

 優しくて、清らかで、やはり水和が近くにいると空気が変わる。あかりの内側からそよ風が起きるようにして、過剰な愛おしさが胸を締め上げて、目の前に広がる光景に、潤沢が満ちていく。

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