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Melty Life

第5章 本音



 あかりと咲穂は、示し合わせでもしていたような足取りで、ざわつく校舎へ引き返した。

 騒ぎの中心を探す途中、どこかですれ違った覚えくらいはある女子生徒の数人があかりに甘ったるい目を向けていた。

 ひしめく生徒らの隙間を縫っていった先に、長い髪にピンク色のアクセサリー、第二成長期の少女らしい肉体の凹凸を制服の下にもったいぶらせた一年生と、さっきあかりが狂おしいほど会いたいと切望していた上級生がいた。

 階段の踊り場にうずくまって、足首を押さえて顔を歪める咲穂の数段上にいた水和は、彼女を見下ろしていた。


「大丈──…」

「私を突き落としておいて、善人面しないで!だ、痛ぁぁっ」

「咲穂!」

「可哀想に、咲穂、来須先輩のこと気になっていたもんね……」

「花崎先輩、咲穂が邪魔だからって怪我させることないじゃないですか」

「良いの、ありさ……私が、悪いの……来須先輩に憧れていたのは本当だから……はぅっ」

「咲穂、無理しないで」


 しおらしく、それでいて烈しい痛みを全身の慄えで訴えながら、咲穂は水和を睨み上げていた。彼女の側に屈み込んで労りや同情の言葉をかけているのは、先月あかりが新入生歓迎会のあと、校舎裏で見かけた一年生達だ。咲穂をいびっていた少女達。

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