
Melty Life
第5章 本音
箸が転げても可笑しくなる年頃だと揶揄されるのは、一理ある。友人の何気ない冗談の、内容自体にきっと楽しくなるのではない。気心知れた仲間と集って、浮かれて、笑顔の連鎖を交わしている雰囲気に満たされるのだ。
一人ではない、孤独ではない。自分が他人に必要とされている事実を日々確認していなければ、落ち着かない。
だから、仮に両親の影響を受けなかったとしても、咲穂はあかりを疎んじていた。愛を必要ともしていないくせに、現に愛される努力もしなかったくせに、外では咲穂に引けをとらないくらいには、女子達の注目を集めている。咲穂には理解出来ない感情、同性を対象とした友情を超えた愛着が紐づいているのだとしても、あかりが目立っていることに違いはない。
あかりのせいで、花崎水和だとかいう三年生も、余計に疎ましくなった。見た目を盛れば良いと思っているだけのような水和は、根本で姉に重なるところがある。水和が来須のお気に入りらしいところも、殺したいほど気に食わない。いっそあの上級生が消えれば、あかりも来須も破滅へ向かってくれるのか。
「咲穂?咲穂、おーい」
随分とぼんやりしていた咲穂の目前に、ひらひらと少女の手のひらが舞った。何でもない、と呟くと、方々から恋煩いかと諧謔が飛んできた。
