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Melty Life

第5章 本音




 仲間達の娯楽に混ざれない原因、母親が早朝から起きてこしらえた弁当を開くと、所要時間を差し引いても手の込んだ品々が現れた。
 色とりどりの一口おむすびに、ハート型の卵焼き、鶏ミンチのハンバーグはハーブやスパイスが咲穂の好みで合わせてある手ごねで、カップグラタン一つにしてもホワイトソースから仕込む辺りが、こまめな母親らしいと思う。そう言えばサラダに散りばめてある月と星型の人参は、端くれが父親と姉の弁当の具材になっていた。それから残りのグラタンも、咲穂の弁当しか作りたがらない母親に押しつけられたあかりが今朝、振り分けていた。


「咲穂のお弁当、可愛い!お母さんも毎日遠足並みの気合いだねぇ」

「ウチなんて中学入学直後だけの、三日坊主だったよ。あ、知ってるか。お陰で昼代貯まるけどねー」

「ダメだよぉ、あんた侑目沢に頼りすぎ。あんたの昼代のために、あいつが援交したらどうするの」

「あの顔面と身体で無理無理ー」


 どっと笑いが沸き起こる。つられて咲穂も吹き出す。

 存外にツボにハマったらしいありさ達は腹を抱えるほどだったため、周囲のクラスメイトがちらちらこちらを窺っている。

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