
Melty Life
第1章 告白
帰宅部なのに、あかりも今日は鞄が二つ。一つは授業用、一つはチョコレートが詰まっている。朝より個数は増えているが、特に、最後にもらった一つは重みが違う。
アルミカップにチョコレートを流して、砂糖菓子で装飾した二粒。余ったからと言って、水和がくれたチョコレートだ。
「本当にごめんなさい。あの、あたし……」
「どうして私のこと、知ってたの?」
「花崎先輩は有名だから。知らない方が珍しいかと」
「ふえっ?!私、そんなに変?浮いてる?」
「いえ、浮いてるんじゃなくて、演劇部の舞台の常連でして。……って言っても、まだ三つしか観てません。これからも楽しみにしています」
そっかー、と、水和ははにかみながらも相好を崩した。
よく動く表情だ。近寄り難いほど現実離れした見目なのに、話すと気さくだ。もとより彼女の芝居は抑揚があって、生気に溢れている。浜辺の砂に喩えると、白くてきらきらしているよりは、波に揉まれて元気な感じだ。
制服を着なくて良い場所ではゆめかわいいファッションに傾倒していて、髪色もそれに合わせたものらしく、風紀チェックが行われる日は団子に毛先を隠したり、セーラー襟に隠したりしているところからしても、割りと茶目っ気ある人物なのかも知れない。
憧れの水和が、隣にいる。すぐ隣に。
あかりは夢でも見ている心地で、人形のような上級生を目に焼きつけようと試みていた。
こんなに間近で眺められるのは、次いつになることか。
